プロジェクトストーリー

  1. HOME
  2. プロジェクトストーリー
  3. 「『board』としてしっくりくるかどうか」。ヴェルク×ディーゼロが共創する、サービスに寄り添い続けるアクセシビリティ

ヴェルク株式会社様「『board』としてしっくりくるかどうか」。ヴェルク×ディーゼロが共創する、サービスに寄り添い続けるアクセシビリティ

システム開発やデータ分析の受託開発、そして業務・経営管理システム「board」を提供するヴェルク株式会社。ディーゼロは2021年から、同社の主力サービスである「board」のアクセシビリティ向上を支援してきました。

「基準を満たすこと」をゴールにせず、実際のユーザーの使い心地と向き合い続けた両社。その4年間にわたる試行錯誤の軌跡を、ヴェルク株式会社 田向さま、野溝さまと、株式会社ディーゼロの新津、平尾、小出が振り返りました。
※本記事は2026年1月に取材したものです。

始まりは「手探り」の状態から。ガイドラインの先にある実装の壁

―「board」のアクセシビリティへの取り組みは、2019年のカラーユニバーサルデザインがきっかけだったと伺いました。当時の状況を教えてください。

田向さま: 正直なところ、当初のカラーユニバーサルデザインの取り組みは「アクセシビリティをやっている」という強い意識があったわけではないんです。2019年に一度区切りがつき、その後にfreee社がアクセシビリティガイドラインを公開されたのを見て、「自分たちもやってみようか」と社内で動き始めたのが本格的なスタートでした。

野溝さま: 最初は他社のガイドラインを参考にしながら、自分たちなりに手探りで進めていました。でも、いざ進めてみると壁にぶつかってしまって。

田向さま: そうなんです。ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(Web Content Accessibility Guidelines 以下WCAG)のドキュメントを読み込んでも、具体的な見方すら分からず、まさに「手詰まり感」がありました。そんな時に、平尾さんのGAAD*での登壇を拝聴したのが、ディーゼロさんに声をかける直接のきっかけになりました。

*Global Accessibility Awareness Day   デジタル分野の「アクセシビリティ」を考える一日として、毎年この日は世界各地でさまざまなイベント等が開催されています

―登壇の翌週には最初の打ち合わせがスタートしたそうですが、お互いの第一印象はいかがでしたか?

田向さま: 当時「board」の開発に関わっているエンジニアは私を含めて4人。リソースが限られている中で、一気に大規模な改修を進めるのは現実的ではありませんでした。ディーゼロさんは、そうした私たちの規模感や状況に合わせて、無理のない進め方を一緒に考えてくれそうだと感じました。

平尾: 実は当時、私たちがアクセシビリティの相談を受ける際は、まず「なぜアクセシビリティが大切か」という啓蒙から始まるケースがほとんどだったんです。しかし、田向さまはすでに「何ができるか」という具体的な実装フェーズの話ができる状態でした。
「基準を満たすこと」が目的ではなく、「サービスの質を上げること」を前提として話ができる。こうした高い視座をお持ちの企業さまとご一緒できるのは、制作側としても非常に新鮮でしたし、いくつか選択肢がある中でディーゼロを選んでいただけたことが本当に嬉しくて。改めて気合を入れてやらなければ、と身が引き締まる思いでした。

現場の熱量を同期する。文化のすり合わせから生まれた信頼

―長期間のプロジェクトですが、意思疎通や進め方で苦労した点はありましたか?​

新津: プロジェクトの初期段階では、やり取りの方法や「どの程度のコンポーネント(共通パーツ)単位で進めるか」のレベル感を合わせるのに、かなり試行錯誤しましたね。それぞれの会社に文化ややり方があるので、最初はそのすり合わせでご迷惑をおかけした部分もあったかと思います。

田向さま: 課題管理の方法も、最初は迷走していましたよね(笑)。

新津: そうでしたね(笑)。ソースコードが直接見えない中でのアドバイスだったので、テキストベースのやり取りだけでは限界がありました。そこで、オンライン会議で都度画面を共有しながら、泥臭くチューニングを重ねていきました。この「対面でのコミュニケーション」を惜しまなかったことが、結果的に精度の向上に繋がったと感じています。

ー業務システムという特性上、UIの変更には非常に慎重な判断が求められたのでは。​

田向さま: はい。私たちが何より大切にしているのは、既存ユーザーの体験を損なわないことです。例えば、アクセシビリティのために検索条件のラベルを表示したくても、それによって入力領域が狭まれば、毎日「board」を使っているユーザーにはストレスになります。

野溝さま: そこで、表示する検索条件をユーザーが設定で選べる「パーソナライゼーション」という解決策をとりました。ラベルを表示したことでメインの領域が狭くなることが気になっても、不要な検索条件を非表示にすることで領域を確保できます。これは、「WCAGの基準を盲目的に満たすこと」よりも「ユーザーの心理的負担を減らすこと」を優先した結果です。

田向さま: 以前、ある方から「設定で逃げないでほしい(デフォルトでアクセシブルであるべき)」と言われたこともありますが、作り手としてはテスト工数が無限に増える悩みもあります。今は「デフォルトで多くの人に使いやすく」しつつ、「個人設定で最適化できる」バランスを探っていますね。

小出: 基準を守ることはもちろん大切ですが、それによって使い勝手が悪くなっては本末転倒です。アクセシビリティスペシャリストの役割上「板挟みになって大変ですね」と言われることもありますが、私としては「板挟み」という感覚はあまりなく、ヴェルクさまの目指すゴールとアクセシビリティの基準をどう繋ぐかがまさに自分の仕事だと思っています。また、修正をただ重ねるのではなく、サービス全体のバランスをヴェルクさまと一緒に考えさせていただきつつチェックできるフェーズに来たことで、より本質的な改善が進んだと感じています。

特別なことではなく「普通の開発スキル」へ。4年間の蓄積が生んだ変化

―この4年間で、ヴェルク社内でのアクセシビリティへの意識は変わりましたか?

田向さま: 長く続けていることで、アクセシビリティが「手に馴染んできた」感覚があります。新しく機能を作る際も、無意識のうちに「ここはキーボード操作を考慮しなきゃいけないな」といった判断ができるようになってきました。特別なイベントではなく、普通の開発スキルの一部になってきているのが大きな成果です。

野溝さま: キーボードだけで操作するユーザーのことなど、以前よりも利用シーンを具体的に想像できるようになりました。また、ユーザーが戸惑ったり問い合わせにつながったりしないか、修正内容に納得感があるかといった観点で考えられるようになりました。

新津: 私も一ユーザーとして「board」を使っていますが、操作のしやすさが目に見えて向上しているのを実感します。「アクセシビリティ=ユーザビリティ」であることを、身をもって証明できているプロジェクトだと思います。

―最後に、これからの展望についてお聞かせください。

田向さま: まずは、アクセシビリティ対応を検討されてる会社さんには「リソースがなくても、少しずつ継続して取り組めば必ず良くなります。諦めずにやってみてほしい」とお伝えしたいです!

また、コーポレートサイトの方もディーゼロさんにお願いしたいというお話をさせていただきました。信頼関係があるからこそ、制約の少ないコーポレートサイトであれば、より理想的なアクセシビリティを追求できるのではないかと期待しています。

新津: 長くお付き合いもあるので、boardに続きコーポレートサイトも良いものにできるよう取り組ませていただきたいです。作った後もしっかり運用面などでサポートさせていただき、長い目で見たいいサイト作りができればと思っています。

平尾: ディーゼロの他のプロジェクトで得た知見をフィードバックしながら、これからも伴走を続けていきたいと思っています。

プロジェクトメンバー

ディレクター 新津
アクセシビリティスペシャリスト  平尾、小出