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ブラックボックスに光を〜撮影勉強会を受けて〜

2023年2月21日にカメラマンのTRIPOD 松本 庄太郎さんをお招きして、「写真撮影とデザイン」のテーマで勉強会を行いました。今回はその中で考えたことや発見をお伝えします。一言でいうと専門業務をブラックボックス化してはいけない、ということです。

勉強会の準備

ディーゼロにはビジュアルデザインのスキル向上に取り込むチームがあり、勉強会や情報共有の定例を行っています。チームのリーダー陣(日高さん山田さん、宮川さん、田中)と勉強会開催のための打ち合わせを重ねました。撮影についてどんな内容が知りたいかチームメンバーにアンケート。下記のような回答があり、知識、準備、現場、に分けてプログラムが組めそうということが分かりました。
  • 知識
    • デザイナーに知っていてほしいこと
    • 難しいオーダー
    • 光の当て方の計算について知りたい(室内・室外)
    • レンズの使い分けに関して
    • 撮影後の作業
  • 準備
    • 打ち合わせで決めたいこと
    • マストじゃないけど準備してあると嬉しいもの・こと
    • 用意しておいたほうがいいもの
    • カンプイメージのわかりやすい伝え方
    • 一枚絵を目指すこと
    • カメラマンが現場で用意するもの
  • 現場
    • 現場で困ること
    • 仕上がりイメージの伝え方
    • 現像のオーダーはどこまで出してほしいか
    • 撮影しやすい雰囲気作りのノウハウ
    • ごちゃつきのある背景のすっきりした撮り方・事前の工夫
    • 素人さんの笑顔を引き出すコツ
    • ディーゼロ案件ではあまりないけどこういうジャンルの撮影も得意とかあれば
    • 高価な機材どれですか(運ぶのをお手伝いするときにより慎重になれるため)

次の段階では松本さんと5人で打ち合わせを行い、勉強会の内容を詰めていくことに。松本さんから普段お仕事をしている中での考えや制作会社に求めることを教えて頂きました。

撮影前にイメージを共有し、ベストな写真を狙っていきたいということ。レンタルフォトから持ってきた写真をカットリストに並べるのではなく、光の当て方や色の調子などディテールを伝えてほしい。そうすることでウェブサイトが目指す表現を狙ったカットが撮れる。

松本さんの仰ったことが質問の回答の根底に多くあるということが分かってきました。

安心の5カットではなく、同じ時間で攻めた3カットを

プログラムを実演中心に変更、事前のイメージ共有が大切なことを体感してもらい、事前質問の回答で内容をフォローしていく流れにすることに。当日はパートナー企業の株式会社キャッチアップ株式会社iiiiillの社員さまにも参加頂き、ディーゼロカフェスペースに20人近くが集まりました。  

松本さんの紹介に始まり、セットを組み立てながら各機材の説明を頂き、メインの撮影実演に入ります。眼鏡メーカーのウェブサイトのメインビジュアルの撮影という想定で、撮影カンプとしてピクスタの写真を提示。黒バックに眼鏡をかけた男性が腕を組んでいるカットです。

ディーゼロスタッフをモデルに、短時間の調整で、あっという間にカンプ通りのカットが出来上がりました。参加者から歓声が上がります。ここから、さらに影を強めて服を見えなくして、商品である眼鏡が浮き上がるようにしたカット、光の当たり方を調整してしっとりした質感が加わったカット、当初の撮影カンプのイメージとは異なる重厚感のある印象的なカットが出来上がりました。

松本さんに、このビフォーアフター2枚の写真についてお話し頂きました。

撮影前にイメージを共有し、ベストな写真を狙っていきたい。デザイン時にどこに何色の文字が入るから人物は左側に配置、ライトの当て方はこう、質感や色のニュアンスの指定など。クライアント、カメラマン、デザイナー三者に事前の共有があれば目的に沿ったイメージが作れる。レンタルフォトから持ってきた画像を撮影カンプとしてしまうと、汎用性はあるが特徴のない写真になってしまうし皆、納得してしまう。限られた時間の中ではこれ以上は詰めることはできない。
レンタルフォトの再現ではなく、そのウェブサイトが目指す表現を狙ったカットを撮っていきたい。
ポーズや構図を変えた安心の5カットではなく、同じ時間を使って攻めた3カットを撮る方が良いものができるのではないか。

これはちょっと耳が痛い話でした。以前、別のカメラマンさんとの話ですが、時間がなく撮影イメージがしっかり練られていないまま、「この人ならいいかんじに撮ってくれるだろう」と撮影現場で撮影カンプを見せた時、色々と質問をされてもうまく答えられずしどろもどろになったり、画面確認をしたときイメージが違うと伝えると「カンプ通りなんだけどね」と言われてしまったことを思い出しました。

ブラックボックスに光を

デザイナーがイメージ(情報)を伝えることの大切さはカメラマンさんだけでなく、他のデザイナー、コーダー、ライター、イラストレーター、色々な職種の方とのコミュニケーションにも当てはまると思います。コンセプトが決まっていない、原稿もないけれどデザインを数パターン制作してほしいと言われたら、デザイナーの私はとてもテンションが下がります。 反対に、「余計な情報かもしれませんが」と教えてもらったことがデザインのヒントになることは多々あります。
「仕事」だからなんとなくやるのと、同じイメージを目指してコミュニケーションをしながら制作すること、どちらがいいと言われたら私はもちろん後者です。
「餅は餅屋」と言いますが、担当領域外のことを分からないからといってブラックボックス化してしまうのではなく、積極的に関わっていくことが大切だと改めて感じました。そして良い状態の関係性が築けた時に、「おまかせ」「いいかんじに」が通じるようになるのではないかなと思います。 

参加者の感想

撮影実演の後は質問コーナーで盛り上がり、1時間半の濃い時間が終了。有意義な勉強会となり、あらためて松本さんには感謝いたします。まだ一緒にお仕事をしたことはありませんが、その機会がとても楽しみになりました。最後に、参加者の感想を抜粋してご紹介します。

クリエイティブの意図を理解し、クライアントの期待を超えるために動いてくれる松本さんのような方は多くないように思います。いい撮影はクライアントとデザイナー、ディレクター、カメラマンとの緻密なコミュニケーションあってこそなんだと認識させられたいい会でした。次回、撮影機会があれば1歩2歩踏み込んで臨むことを意識しようと思います。
松本さんの撮影への熱量がとても伝わってきました。
いつも現場でカメラマンとしてのご意見もお伺いしつつコミュニケーションをとりながら進めていますが、そのスタンスは変えずに行こうと再認識しました。
カメラマンさんから目線の話が聞けてよかったです!今後立ち会うことがあれば、しっかりどんな写真が欲しいか準備していこうと思いました。
広告表現は強弱が大事で、どこに目線を持っていくかを考えているというお話が印象的でした。今回はメガネの商材のクライアントを想定しての撮影でした。ただ「メガネをかけた人物をきれいに撮影する」、といった表現からさらに細かく、「メガネに視線が行くようにパーカーは黒で沈ませる」と、広告的に考えているところを実際に見させていただきました。
「どんな風にしたいか」を明確に伝えることがとても大事。デザイナーとカメラマン間だけの話ではなくてどの立場でも意識する必要のある事だと思いました。
事前準備/打ち合わせをしっかり行う→撮影を実際に行う前の事前準備がとても大切だということがわかりました。
窓口担当として、デザイナー、クライアント、カメラマンさん、それぞれの思いや考え方を的確に汲み取り、円滑に進めるサポートができればと思いました。

Written by 田中

ディーゼロのデザイナー/ビジュアルディレクター。
グラフィックデザイナー歴10年、ウェブデザイナー歴2年。
趣味は読書、映画、お笑い鑑賞。
本は電子より紙派、借りるより買う派。